『待ちあわせ』

  • 2018.04.27 Friday
  • 02:05

 

2018年4月22日、日曜日、17時、神保町試聴室で『待ちあわせ』という作品を発表しました。

この作品は音楽家でイラストレーターの黒岡まさひろさんとの共作でした。

ここに、わたしのパート(芝居)であるテキストを公開します。

本編は交互に黒岡さんの歌やお芝居やラジオ番組が入る構成になってました。

 

宝物のような幸せな作品になりました。

黒岡さんに感謝。

観にきてくださった皆さまも、どうもありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

1.電話

こんにちは。わたし高山と申します。高山玲子と申します。急に電話してすみません。あの、突然なんですけど、

お会いしたいなと思いまして、そうです、あなたと、いえいえ、変な勧誘とか誘惑とかでは全くありませんので、

ただ、一度お会いしたい、というだけなんです。

もしよろしければ、よろしければ、4月22日の日曜日、午後、5時に待ち会わせしてくれませんか?

ちょっと、会ってお話し出来ればそれで十分です、すぐ、終ります、から、はい、はい、はい、では、はい、ええ、

ありがとうございます!よろしくお願いします!あ、わたしはくすんだピンクのコートを着て行きます。

いえ、綿です。わたしは黒岡さんの顔、知ってますから、大丈夫です。ありがとうございます。では、5時に。

 

2.4月11日

『待ちあわせ』まであと10日、なにをしようか相変わらず考えていて何も浮かばず、少し台本を書いたけど、果たしてこれが面白いものになるのか、確信が持てない。逃げ道と言うか、安全対策のようなもののつもりなのだろう。

黒岡さんは今日は何をしているのかな?先週撮影をしてから一週間経つが連絡がない。撮影した動画もアップされない。

だからといって責めている訳ではない、きっと彼は彼なりに考えて理由があって連絡しないのだろう、と思う。思うことは自由だ、これはわたしの自由であって、真実ではない、わたしはわたしが安心したいだけかもしれない、だけど、この思うという行為は、経験と実績と勘によりひとつの答えを導き出している訳で、わたしはこの自身による思い、を予め、信頼しているのである。だから「だいじょうぶ」、と思うことにする。

今日は体調が優れない。優れないといっても今は朝の6時になろうとしているから、優れないなら寝ればいいんだけど、不安で寝てはいけないような焦りがある。全然本当は「だいじょうぶ」なんかじゃない。黒岡さんと、『待ちあわせ』できるのかな、来てくれたら、会って、それでだからどうって、わからないなぁ。

 

3.4月12日

今日も黒岡さんから連絡はなかった。

今日は目が覚めてすぐ、といっても昼の3時だったんですけど、走った。近所をぐるっと、約3.5キロくらいのコースがあって、わたしのランニングコースなんだけど、数年走ってなかったんだけど、先週から走り始めた。ちょっとむしゃくしゃしたことがあって、それで頭を切り替えたくて走っていることころがあって、これどうなんだろう、効果あるのかわからないけど、走るとなんかちょっとすっきりするところはある。

黒岡さんはスマートだけど何かしてるのかな、健康のために何か、とか、とか、とか、

黒岡さんのこと何も知らないなぁ、ほんとに何も知らないなぁ。いったい何したくて、何が出来ると思って誘ったんだっけ、ただの迷惑だったんじゃないだろうか、だって連絡ないし、何するかわからないから、観に来てよと人誘うにも誘いづらい、というかほんといって集客とかどうでもいい、わたしに興味ある人なんて、ほとんど居ないだろ、それについても最近もうどうでもいいやと思っているところがあって、それはわたし自身、人のことをどうでもいいと思っているところがあるからで、だから何も言えない。だってわたしも全然どこも行かない、あんまり興味がないから。

「冷たそうだよね、人に、そういう印象、昔から」と先週、言われた、むしゃくしゃの理由の一つ、この人のこの言葉は、けっこう前にも言われていて、わたしはたまに自分と合わない人を無意識に排除してしまうところがあって、そのことを指摘された。だから気をつけて、注意深く、してきたはずなんだけど、また言われた。やっぱりわたしは人に冷たいのかな、どうでもいいと思っているから、だから黒岡さんにも「どうですか?来週ですけど?」って聞けずにいるのかもしれない。連絡はしないけど、会った時のシュミレーションだけしておく。

 

高山 どうも、黒岡さん、ですね、わたし、高山です、高山玲子と申します。今日は来てくれてありがとうございます。

   黒岡さん、わたしのこと、お覚えてますか? 覚えてますか?あの、あの、あの日のことなんですけど、、

 

4.4月13日

昼のバイトを休んでしまった。また、起きたら10時で、1時間遅刻していて慌てて電話をかけたら「どうするの?だめ?来るの?わかんない?はいじゃあ来れるんならもう一回連絡して!」って、Hさんの語尾が今日は一段と荒っぽい。最近みんなが家庭の事情で休みがちで、Hさんに全部負担がいってるから、わたしは好き勝手休んでいるいいご身分で余計にイラッとするんだろう。どうもすみません。

夕方起きて、銭湯の番台に行く、銭湯の番台をしながらメールを返したり『待ちあわせ』について考えたりした。

『待ちあわせ』何をやるか決まってないし、こんな不安定な状態なのに、終ることが少しさみしいと思った。毎日こうして『待ちあわせ』について考える、『待ちあわせ』たら何しよう、何言おう、何起きるかな、って考えるのが割と楽しい、22日に、黒岡さんと『待ちあわせ』してしまったら、もう会うこともないかもしれない。そんな予感が充満してる、だってもともとぜんぜん会うこともなかった人だから、この先も進展はないだろう、きっとたぶん。なんて思う(思いは経験と実績と勘による)と寂しくなった。寂しい。

 

5.4月14日

もう土曜日だ、来週の日曜日まで、あと7日か、相変わらず、黒岡さんから連絡はなかった。

ああ、早く終らないかな、憂鬱。なんだか『待ちあわせ』のこと考えると憂鬱。なんでこんなことしようと思っちゃったんだろ、なんで頼んじゃったんだろ、一人でやればよかったか、やめたいな。

だめだまた考えちゃった、そんなことはないです、なんてのは思わない。思ってないです。

『待ちあわせ』したらいい、『待ちあわせ』さえできたら、きっと大丈夫、まだ何か奇跡のような事が起こるような気がしている。今日も、そう言い聞かせた。

今日は昼から体操教室で、最近体操教室に来る人少なくて、ちょっとモチベーション厳しい、けど佐藤さんと若い女の子が来てくれた。若い子の肌はすべすべしていてやっぱり気持ちが良かった。とかこれ男性がいったら今、大変なことになるんだろうな、わたしは自分が平均的な女性の考え方や意識を持っていないような気がするから「me too」は躊躇してしまう。共有することが出来ない。「わたしの良いはみんなの良いではない、みんなの良いはわたしの良いではない」でしょう。今日はめんどくさい書類を仕上げた。明日送ろう。おやすみ、黒岡さん。

 

6.4月15日

今日は日記を付けるのはやめにして、さっき浮かんだシーンをやります。 

 

高山 あなたが口を聞かなくなってから、随分長い時間が経つわ、わたし、最初は戸惑った、あなたに、小馬鹿にされているのかと思って、とても悲しんだわ、でも今は違う、あなたはわたしを小馬鹿にする為に黙っている訳ではない、あなたの目を見るとわかる、あなたは出口が見つけられず彷徨っているのよね、正直言うとね、わたし今とても幸せなの、口を聞かないあなたと永遠に一緒にいられるじゃない、だってあなたは何も言わないから、わたしはずっとあなたの側に居られる、わたしは永遠にあなたの側に居る事にするわ、きっと、飽きるまで、わたしが飽きたら、あなたは終ってしまう、全てがわたし次第、そう思うとね、わたしとても幸せなの。

 

7.4月16日

疲れが溜っている、しんどい。休みたいけどこの前休んだから、バイトに行く。バイトが終って歯医者へ行き、家に帰って20分横になるつもりが熟睡してた。それから家から歩いて3分の区民集会所へ、今日は体操教室なんだけど、だれも来ない予感というか来ないで欲しいな、なんてちょっと思ってたんだけど、フジワラさんが来ていた。だれか一人は来る。だれか一人でも来たら体操は行なわれるのである。一人だとうれしいとみんな言うけど、わたしは一人だからうれしいという感覚はないな。フジワラさん『待ちあわせ』に来てくれるらしい。それ聞いたら少しホッとした。誰も来ないような気がしてたから良かった。フジワラさんと和室で二人きり、寝転びながら膝をかかえて天井を見ていた。体操してなかったらこんな時間訪れなかっただろうなと思う、変なの。フジワラさんはやさしいなと思って聞いたら、家族もみんなやさしいって、ご飯作ってくれたり洗濯してくれたり、犬がいたりする、やさしい家族。

フジワラさん日曜日の『待ちあわせ』に来るらしいよ、黒岡さん、『待ちあわせ』3人になってもいい?

フジワラさんが来る事をシュミレーションしてみる。

 

高山 あ、どうも、こんにちは。すいません、ありがとうございます、あの、わたし高山と申します、そうなんですね、いえいえいえ、うれしいです、来て頂いてありがとうございます。あの、あの、あのですね、あのわたし実は前に荻窪の音楽スタジオでアルバイトしてたんですけど、そこでフジワラさんに会ってるんですね、あーーーー、はい、あのそれです、それそれそれ、わたしです。なんかすいません、無愛想ってよく言われてたんですよ、いやいやほんとすいませんでした。いえいえいえ、でもわたしフジワラさんのライブ4回くらい見てるんですよ、町田のお寺で見たの、すごい良かったですー。あと、あと、あと、いえいえいえいえ、あ、そうなんですね、黒岡さんとも一緒にやられてるんですか、仲良し?いえいえ聞いてなかったんで、へーー、黒岡さん、フジワラさんも来てくれましたよ『待ちあわせ』、ところで黒岡さん、わたしのことは、覚えてますか?

 

8.4月17日

体調不良のため一日起きられず、『待ちあわせ』にも手を付けられなかった。

 

9.4月18日

目が覚めたら黒岡さんからメールが届いていた。ちょうど2週間ぶりだ。怖いことが書いてあったら【例 出られなくなった・もうやめたい・あなたとは出来ない とか?】どうしようと思ってなかなかすぐに開けなかった。それでも開いてみたら、映像の編集やってますって、遅れてすいません、って書いてあって、あやまってもらって逆にそんなすいません、みたいな気持ちになって、だってこんな毎日勝手に日記書いてて、もう映像なくてもいいやって思ってるから、映像出来たらどうしよ、逆に、みたいな、でもでもでも、映像作ってくださってるんだから、それが出来たらもっと面白く膨らむはずだ、そうだ、そうだ、「ありがとうございます!!よろしくお願いします!!!」、返信ってした。

今日は夕方から自主練で区民集会所を取ったから稽古にいく。座布団を床にいっぱい敷き詰めてごろごろ寝転んでいた。一人だとやる気が起きない。少し動きを考えたり、最初の電話の会話を試しに録音してみたりした。最後に、最後のシーンにどうかなと浮かんだやつをやってみたら、思ってた通り、なんだか良くて、それに満足してしまって、稽古場を後にした。その後、吉祥寺で「パシフィック・リム アップライジング」を観たらくそつまらなくて、監督変わるとこんなにつまんなくなるのかって、びっくりした。

 

10.4月19日

黒岡さんが動画を編集してYOUTUBEにアップしてくれた。36分ある。わたしは一日中アルバイトだから、全部流して確認するのは深夜になってしまう。それでもかいつまんでザッと流して見たらとても素晴らしくて、編集も上手だし、構図もキレイだし、黒岡さんってほんとにすごい方だなと改めて思い知った。

今日のわたしは、バイト先で昼ご飯何にするかっていうささいな事でちょっといがみ合ってしまって、最後まで口をきかないで退社したのと、知人にラインするも概読スルーされているのとで、落ち込んでしまっている。わたしが何か気に触る事をしてしまったのだろうか、なら、わたしのせいで怒っているなら、あやまりたい。すぐにあやまりたい。わたしは自分のせいで怒ったり悲しんでいる人がいることがとてつもなくしんどい。

そうこう言って、もう『待ちあわせ』本番まで3日だよ、大丈夫かって聞かれたら、だいじょうぶじゃないだろう。

 

11.4月20日

今日は一日『待ちあわせ』の準備に費やす事にしたから、バイトは休みにした。今日まで書いた日記をだーっと、口に出して読んでみた。恐ろしく暗い、大丈夫だろうか、これ、こんなの黒岡さん聞いたら嫌な気持ちになるかな、どうしよう、今からやめて、でも他に何すればいいんだ、そうだ、そうだ、黒岡さんが送ってくれたメールに何か書いてあったわ(携帯見る)、

“今、考えてるのは、お互いにシナリオ(映像にあわせた)つくってきて、

2つの(映像は一緒)世界をつくるという感じです。

僕が、「待ち合わせ」をテーマにつくる世界と

高山さんが「待ち合わせ」をテーマにつくる世界

30分〜50分の映像に会わせるという。。。

それにお互いが振りつけるっていう感じです。

2つの(お互いが振りつけた)世界があるって感じですかね。“

 

なるほど、映像に振りをつける、か、

◆動画再生

映像に合せて同じ動きをする、黒岡さんも映像に合せて同じ動きをしてシンクロさせてみたり、

 

12.4月21日

それでは、わたしの考えたラストシーンをやって、そのまま22日、17時の『待ちあわせ』に繋げていきたいと思います。

 

トントン トントン トントントン 黒岡さーん 黒岡さーん トントントン 聞えますかー 聞えますかー

黒岡さん 高山です 黒岡さん わたしのこと 覚えてますかー わたしのこと 覚えてますかー トントン

あの日、待ちあわせ、しましたよね

覚えてなくてもいいんですけど 覚えてなくてもいいんですけど でももしよかったら あの

次 目が覚めたとき 歌をうたってくれませんか わたしのために 歌を うたってくれませんか

覚えてたらでいいんで うたってくれませんか

わたしのこと忘れててもいいんで お願いします じゃ また来ますねー  サヨナラ

(懐中電灯を持って床を這って戻る)

 

13.4月22日

黒岡 どうも黒岡でーす

高山 どうも高山ですー

二人 はじめましてー

黒岡 今日は皆さん『待ちあわせ』に来てくださり、ありがとうございました!それじゃあ歌を歌います『待ちあわせ』

 

『待ちあわせ』(歌)

 

ようこそぼくらの 待ちあわせ

電話をかけたのは わたしから

呼ばれてきたのは ぼくの方

ここで会いましょう 待ちあわせ

 

時間と場所を決めたら 何が起こるか

ただただわたしは 期待をしているの

 

ようこそぼくらの 待ちあわせ

電話をかけたのは わたしから

呼ばれてきたのは ぼくの方

ここで会いましょう 待ちあわせ

 

14.夕方の公園 

1 2 3 4 5 6 7 8 もーいーかい んん、、、

1 2 3 4 5 6 7 8 もーいーかい まだぁ、もーおそいよっ

1 2 3 4 5 6 7 8 もーいーかい? いいのー、いくよー さがすよー

はい、(振り向く) わっ、黒岡さん、見えてるけど、見えてるよ?もしかして、居ないふりしてるの?それ?

え、でもわたし見えてるけど、かくれんぼできてないけど、いいの?どうしよ、わたし、触るよ、いいの、ハイッ

 

 

おしまい 

 

 

 

 

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